被害を減らすことができる「データ」とは
被害対策のヒアリングを行っている際に、自治体のご担当者様にこれまでの記録の話を伺います。
「捕獲記録はありますか」「捕獲地点はわかりますか」「被害の報告、目撃情報はありますか」
このようなデータであれば、有害・管理捕獲の調書などで保管されています。また、被害の場所や、目撃地点も受付時に記録をとられているケースもあります。
しかし、一方で「データは取っているのですが・・・」という話をいただきます。
そうです、データはあるけれど、「だからどうする」かが見えてこない、という感じです。
- 前任者がそういう風にしていたからしている
- 県に報告するからそうしている
- 支払いの証憑(しょうひょう)としてとっている
おおよそそのような回答をいただきます。
ここで、一つたとえ話をしましょう。
お店でもらうレシートを想像してください。
レシート単体だと、いつ、何のお店、何を買ったかがわかりますね。1枚1枚にその時の情報が入っています。ただ、それ以上でも、それ以下でもありません。

さて、1ヶ月ほど財布の中で溜まっていくこともあるでしょうか(笑)見てみましょう。
そうすると、毎週月曜日の朝にコンビニに寄ってお茶を買っている、購入するサンドイッチはタマゴサンドが多い、といった「傾向」が掴めますね。

期間はまちまちですが、ある程度の期間を決めて、レシートを見ていくと、おおよその「動き」「クセ」が見えてきます。
さてさて、ここまでくると溜めてばかりでもいけませんね。財布の中もごちゃごちゃしますし、整理しましょう。
整理する方法は、いわゆる家計簿であったり、会社では帳簿(総勘定元帳)や、そこから月次売上、損益計算書などを作りますね。整理するだけではありません。
整理は手段であって、目的は「分析」です。

そうです、家計簿や決算資料を作るといろいろなものが見えてきます。
◯月は支出が多いな、◯◯費はこんなにあったのか、など、その都度では気づかない、集計されたからわかる数の大小が見えますね。
では、ここで、今後を考えてみましょう。
イメージとしては「来年度の予算」です。どのようにして決めますか。
1.溜まったレシートを見てなんとなく傾向で決める
2.年間の決算書にして、その総額で決める
3.年間の決算時にそれぞれの分析をして、無駄をなくして決める
どうでしょうか、ここで来年度の予算に大きな差がつきますね。
ましてや、3の分析には経営相談や会計士さんなど、その道の専門家が関わると、より顕著に差が出ます。
では、こちらを野生動物に関する各種記録(捕獲、被害報告、目撃情報など)や動物の位置情報の記録等に置き換えてみましょう。
1.被害報告はファイリングして置いておいて、とりあえず例年通りにしておく
2.なんとなく今年は被害報告が多かったから、とりあえず報告は2割増し、捕獲数もそれに合わせる
3.例年比較、時期別の被害・出没傾向、対応する捕獲個体の状況を専門家と協議して、被害を減らすための対策予算優先順位を決める
今年は多く捕獲した、GPSを見るとここ最近はこのあたりに来ている、そういった情報は短期的に見る上では重要ですが、残念ながら分析ではありません。
野生動物の被害対策はデータサイエンスが欠かせません。
場当たり的な対応は、費用も掛け捨てとなる上、自治体担当者自らだけでなく地域住民も疲弊します。
分析は、市町村の担当者でもできる簡易的なものから、専門家ができるものまで多様です。
大事なのは、「分析するか、否か」です。
一例で言うと、このようなものがあります。
アライグマ:雌雄、幼獣・成獣、捕獲場所の地理条件などを整理、分析すれば捕獲効率が上がる
ニホンザル:GPSログデータをGISで解析、条件ごとの停滞場所を割り出せば、被害予測かつ捕獲効率が上がる
イノシシ:被害情報を集め、地点での地理条件、痕跡がわかれば、侵入してくる柵の破損箇所や今後の被害予測ができる
実務で対策にあたっていると、実は、「レシート」に該当する被害対策に関するデータは比較的揃っていることが多々あります。
データとしては、被害を減らすための「宝の山」です。
しかし、その価値が認識されないまま溜まりに溜まった「レシート」は文書保存期間を過ぎれば廃棄されます。
新しい対策でICTなどは目を向けられがちですが、まずは、手許にあるものを正確に分析するだけでも、十分に効果を上げることができます。
どうでしょうか、お住いの地域はどちらの対策となっていますか?
データから見出す効率的かつ効果的な獣害対策、ぜひ、取り組んでみませんか。
少しのデータでサンプルの作成も可能です。
お気軽にご相談ください。