新型コロナと研修会(1)

過日、遅くなりましたがワクチンの2回目接種が完了しました。

なかなか副反応もしっかり出て、関節痛・筋肉痛は治まりましたが、しばらく腰痛だけ残るという後味悪いものでした。

person holding white ballpoint pen
Photo by Mufid Majnun on Unsplash

かれこれ1年半、新型コロナの影響で各地で研修会などが中止されています。

甲斐けもの社中でも、研修会だけでなく集落環境診断も何件か見合わせることがありました。

最初の頃はワクチンもなく、とにかく選択肢が「自粛」一択となり、すべての研修会がなくなりました。

調査や分析、捕獲実務は単独や2人程度で動けたとしても、「複数人で何かをする」ということには、いくら手指消毒やマスク、換気などガイドラインを遵守するといっても、なかなか踏み切ることはできませんでした。

皆様のところはいかがでしたでしょうか。

person holding white cigarette stick
Photo by Devyn Holman on Unsplash

しかし、「自粛」ばかりでは対策も進みません。このコロナ禍においても現在進行系で被害があり、要望もあります。

 

もちろん対面での研修会に越したことはないですが、もう一つの選択肢としては「オンライン化」です。

甲斐けもの社中の業務の中でも、Zoom等でのオンラインの打合せや、Google系のオンラインドキュメントの共有などは日常的でしたし、100人程度の大会のオンライン開催のシステム作りも行いました。

この業務の中で、いわゆる「受益者」は日常的にPCに触れ、日常の業務をオンラインでやっているユーザーがほとんどです。

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Photo by Surface on Unsplash

それが集落となると、本当に「デジタル・ディバイド」と呼ばれるように、いわばオフラインが日常な社会です。最近は集落の役員年代の方々もスマートフォンに切り替わりつつありますが、リタイアする前に仕事でPCを使っていた方以外は、「オンラインで何かをする」というのは難しいです。

ここで言いたいのは「オンラインだからいい」というわけではありません。現場で顔を合わせて、対策を進める、それに敵うものはありません。オンラインとオフライン、強いて言うなら、「(比較する)土俵が違う」ということです。それぞれの「便利さ」もあれば、「不便さ」もあります。ただ、その弱さが代替の利くものかどうかがポイントです。

自分もICT機器を日常的に使用しています。現場でタブレットや通信系のマイコンを使っていると、よく「便利そうでいいですね」と言われます。ですが、その際に「停電時には弱いですから(笑)」という話をします。(と、言いつつ、防災用にソーラー式の自立電源数セット準備し車には大容量モバイルバッテリーを備えていますが・・・)

話が逸れましたが、つまるところは「コロナ禍で集落の講習会はできるのか」です。

結論から言うと、実際のところ、かなり厳しいかもしれません。理由としては下記のとおりです。

  • 個人単位となると映像を送れるだけの通信インフラがない場合がほとんど
  • 全員がスマートフォンであるとは限らない
  • 集落の中にPC及びZOOM等設定ができる方がいないか限定的である

仮にできる方法としては、集落の公民館でのビデオ双方向通信付きパブリックビューイングでしょうか。

しかし、それも「密にならないこと」「公民館での通信回線が必要」という条件に加え、「集落にいる機材に明るい方のフォローが必要」となります。つまり、それが市町村職員が対応するとなると、そう大して普段の研修会と変わらないことになります。

 

ここで一旦考え直してみます。そもそも「オンラインで」が絶対必要条件でしょうか。

一般的な研修会の例は下記のとおりです。

  1. 屋内中心(知識型)
    1. 獣害対策の基礎
    2. 生態、防除方法
    3. 集落点検報告
    4. 集落環境診断(WS)
  2. 屋外中心(体感型)
    1. 集落環境診断(踏査)
    2. 防除技術
    3. 捕獲技術

方法によっては屋内中心の部分を置き換える方法があります。

 

こちらの事例では、農林水産省の総合対策事業で地元JA、CATVとも協働し対策の番組を作りました。

令和元年度 農林⽔産省⿃獣被害対策基盤⽀援事業「対策⼿法確⽴調査・実証事業」
行政(市)・JA・民間の連携による鳥獣被害対策の情報発信の取り組み(山梨県 山梨市)  概要版

 

これまでの調査の中でも、地域への正しい対策技術の普及がボトルネックであると感じていました。実際のところ、地域住民自身で防除したり、捕獲をしたりはしていますし、集落の中でも意欲がある方が担ってくださっている事例も数多くあります。しかし、基礎的な生態やその方法に関する知識が不足していると、費用対効果・労力のパフォーマンスが低くなり、それが意欲低下につながっていました。

それを解決するためには、問題点を整理し、要点をまとめ、繰り返し伝え普及させることです。地元CATVでは営農情報を流すという伝達チャンネルがあるので、重点的に、被害が出る前や捕獲最適時期に放映していただいています。

結果的に現状のコロナ禍の中でも、受益者が対策に関する情報にリーチすることができています。

しかし依然、実地についてはまだまだ課題です。

現状では、事業に関して県・市町村の新型コロナウイルス感染拡大防止に関するガイドラインを確認し、その事業に関するガイドラインを定めるようにしてます。(ガイドライン+手指消毒励行など)また、ワクチンの接種率が上がってきた今だからこそ、移行期の今は接種者のみに限定するのもやむを得ない方法かもしれません。

とはいえ、「新型コロナ対応として」何でも自粛ではなく、できる部分は何か、を切り分けて検討する必要があると感じています。「講習会ができない・やらない」のはリスクがなく事業としても簡単ですが、地域が困っている状況を放置してしまう状況でもあります。冒頭でも述べた「不便さ」は、課題を明確にすれば、現存する情報インフラで代替することもできる可能性があります。例えば、先程のCATV事例でも、専門家を通して地域の被害対策状況を人の接触を減らして確認し、監修のもとで、対策の中で必要な「明日から使えるテクニック」を「繰り返し伝えられる」情報媒体で流すことも重要です。(例えば、CATVや回覧板など)

こういう状況だからこそ、オフラインでも一工夫して、地域の対策の質を上げることも重要ですね。